賃貸借契約を終了する際、敷金の返還を求める場合、明け渡しと同時履行のルールを理解しておくことが重要です。
この記事では、同時履行のルールについて解説し、敷金の返還をスムーズに進めるためのポイントをご紹介します。
敷金返還と明け渡しの同時履行の関係
敷金返還と明け渡しの違い
敷金は、賃貸借契約の際に賃借人が賃貸人に預けるお金のことです。
賃貸借契約が終了する際に、賃借人が賃貸人に支払うべき家賃滞納や原状回復費用などの債務がなければ、賃貸人は敷金を賃借人に返還する義務があります。
明け渡しとは、賃借人が賃貸借契約に基づいて賃借していた物件を、賃貸人に返還することです。
つまり、敷金返還は賃貸借契約終了後の賃貸人に対する賃借人の請求権であり、明け渡しは賃貸借契約終了後の賃借人に対する賃貸人の請求権です。
敷金返還と明け渡しの同時履行の原則
民法上、敷金返還と明け渡しは同時履行の関係にあります。
これは、賃貸借契約終了後の賃貸人に対する賃借人の請求権と、賃貸人に対する賃借人の請求権が、一方の履行がない限り、他方の履行を請求できないことを意味します。
つまり、賃借人が賃貸人に明け渡しをしない限り、賃貸人は敷金返還を拒否できます。
敷金返還と明け渡しの同時履行の例外
敷金返還と明け渡しの同時履行の原則には、以下の例外があります。
- 賃貸借契約に同時履行を排除する特約がある場合
- 賃借人が賃貸人に明け渡しを申し出ているにもかかわらず、賃貸人が明け渡しを認めない場合
- 賃貸人が敷金返還を拒否している場合
これらの例外の場合、賃借人は賃貸人に対して敷金返還を請求することができます。
敷金返還と明け渡しの同時履行に必要なもの
明渡証明書
明渡証明書は、賃借人が賃貸借契約の終了に伴い、賃貸人に明け渡した旨を証明する書面です。
賃貸人は、この書面を受け取ることで、賃借人が明け渡したことを認め、敷金返還の義務を負うことになります。
明渡証明書は、賃借人が賃貸人に明け渡しをした後、賃貸人に請求して交付してもらいます。
原状回復費用明細書
原状回復費用明細書は、賃借人が賃貸借契約終了時に行う原状回復工事に要した費用の明細を記載した書面です。
賃貸人は、この書面を受け取ることで、賃借人が原状回復費用を負担したことを認め、敷金から原状回復費用を差し引くことができます。
原状回復費用明細書は、賃借人が原状回復工事を行った後、賃貸人に請求して交付してもらいます。
その他必要な書類
敷金返還と明け渡しの同時履行に必要な書類には、上記の明渡証明書と原状回復費用明細書のほか、以下のような書類が考えられます。
- 賃貸借契約書
- 賃貸人から賃借人への退去通知書
- 賃借人から賃貸人への解約申告書
- 賃借人から賃貸人への敷金返還請求書
なお、これらの書類の作成は、賃借人が行います。
敷金返還と明け渡しの同時履行の手順
賃貸人に明渡証明書と原状回復費用明細書を送付する
賃借人は、賃貸借契約の終了に伴い、賃貸人に明け渡しをした後、賃貸人に明渡証明書と原状回復費用明細書を送付します。
明渡証明書は、賃借人が賃貸人に明け渡しをした旨を証明する書面です。
原状回復費用明細書は、賃借人が賃貸借契約終了時に行う原状回復工事に要した費用の明細を記載した書面です。
これらの書類を送付することで、賃貸人は、賃借人が明け渡しをしたことを認め、敷金返還の義務を負うことになります。
賃貸人が敷金返還の手続きを行う
賃貸人は、賃借人から明渡証明書と原状回復費用明細書を受領後、敷金返還の手続きを行います。
敷金返還の手続きには、以下のようなものがあります。
- 賃借人の敷金預り金の残高を確認する
- 原状回復費用を精算する
- 敷金から原状回復費用を差し引いた残額を賃借人に返還する
賃貸人が敷金を返還する
賃貸人は、敷金返還の手続きが完了した後、賃借人に敷金を返還します。
敷金の返還は、原則として、現金で行う必要があります。
ただし、賃貸人との合意があれば、銀行振込や口座振替などの方法でも返還することができます。
敷金の返還は、通常、賃貸借契約の終了から1ヶ月以内に行う必要があります。
なお、賃貸人が敷金返還を拒否する場合は、賃借人は、賃貸人に対して訴訟を起こす必要があります。
敷金返還と明け渡しの同時履行に関するトラブル
賃貸人が敷金返還を拒否する
賃貸人は、賃借人が明け渡しをしていないことを理由に、敷金返還を拒否することがあります。
この場合、賃借人は、賃貸人に明渡証明書を送付して、明け渡しをしたことを示さなければなりません。
また、賃貸人が敷金返還を拒否する理由が、賃借人の債務である場合、賃借人は、その債務を支払うことで、敷金返還を請求することができます。
賃貸人が不当に敷金から差し引く
賃貸人は、原状回復費用を精算する際に、不当に敷金から差し引くことがあります。
この場合、賃借人は、賃貸人に、原状回復費用の算定根拠を説明してもらうことが必要です。
また、賃貸人が不当に敷金から差し引いていると判断した場合、賃借人は、賃貸人に対して、差額の返還を請求することができます。
トラブルを防ぐためのポイント
敷金返還と明け渡しの同時履行に関するトラブルを防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- 賃貸借契約書の内容をよく確認する
- 明渡証明書を必ず作成する
- 原状回復費用の算定根拠を説明してもらうこと
- 不当な敷金の差し引きに注意する
まとめ
敷金返還と明け渡しは、賃貸借契約終了後の重要な手続きです。
賃貸借契約書の内容をよく確認し、明渡証明書を作成して、原状回復費用の算定根拠を説明してもらうことなど、トラブルを防ぐためのポイントを押さえておきましょう。
もしトラブルになってしまった場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
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